音楽 社会

外国人とロックバンド

2017/03/03


SALTY DOG からボーカルの INGER がビザの関係で活動継続が困難になったため、脱退を発表した。

以下抜粋。

【大事なお知らせ】
http://saltydog-japan.com/news/0/34166/

いつもSALTY DOGを応援して頂き、誠に有難うございます。
現在決定しているライヴをもちまして、SALTY DOGからINGER(Vocal)が脱退することになりました。
突然の発表になってしまい大変申し訳ございません。

INGERですがビザの問題によりバンドを続けることが困難となり、ビザの発行が可能な業種へ就職致します。
就業後はバンド活動に割く時間が取れない為、脱退という形を取ることとなりました。

ツアーファイナルシリーズが目前という時期ではございますが、INGERが歌う1本1本のライヴを全力で演りたいと思っております。
また、未発表のライヴがありますので脱退は5月頃を目処に調整しております。

Ozzfest 2015 でライブを見て、オープニングアクトの中では出色の芯の通ったしっかりとしたライブで、ボーカルにも華があり、今後これは伸びるかもしれんと期待していただけに残念ではある。

外国人が外国でパーマネントなバンドをやる上での課題

さて、外国人が外国に短期でも長期でも滞在する場合、色々と手続きや制限がある。これはどの国でも程度の差こそあれ、基本的にはそれほど変わりなかろうと思う。外国人は、外国で何をやっているのかよくわからないし、どこにいるのかもよくわからない、というわけにはいかないのだ。これは法律運用 (不法滞在予防) や治安維持の観点から妥当性がある。

日本の場合、これからバンドを立ち上げようとか加入しよう、インディーズのバンドとして活動しようとする場合、ほとんど留学生ということになるだろう。そうすると「留学ビザ」と「在留資格認定証明書」に加えて、有料でのライブをやったり、有料音源を発表する場合には、「資格外活動許可」を取得する必要がある。(出典:法務省 http://www.studyjapan.go.jp/jp/toj/toj04j.html#no06)

一般的に、大学一年から四年まで留学して、その後日本国内の企業に就職するとなると、就職先を確保した上で就労ビザを取得することになる。その上でバンド活動をするには、先述の「資格外活動許可」が再度必要だ。大学院に進むとなると再度留学ビザの取得が必要だが、専門的な研究がメインとなるために、それはそれでバンド活動は難しくなる可能性がある。

学生であれば留学先の規定の年限という時間制限があるが、元々日本で就業している外国人の場合は、就業している仕事が安定的に継続できるのであればビザの更新もできるだろうし、資格外活動許可も継続して取得できるだろうと推測される。

SALTY DOG の場合

彼らがやっていたのは、INGER の留学期間中に職業音楽家の身元引受人としてメジャーあるいは大きめのインディーズ事務所がついてくれればよかったのだが、それができなかったという話だろう。上記の中で言えば、かなりハードルが高い方法で、現在のシーンの様子から考えると、針に糸を通すような可能性の話だった。80-90 年代の好景気の時代であればそうした存在も現れたかもしれないが、そもそもその時代には日本で外国人がインディーズでロックバンドをやるということ自体が一般的に認知されていなかったという面もあるので、それはそれで難しかったかもしれない。

実際かなり厳しい

個人的に、バンドでボーカルを募集していた時に、「一年間の留学期間中に日本でバンドをやってみたい」という外国人からの応募があったことがあるが「お前の思い出作りにつきあってるほどヒマじゃないんじゃー!」ということで却下したことがある。そういえばその人も北欧の人だったかもしれない。

留学生には時間的な制限があるので、じっくり時間をかけてというわけにいかない。よほどパンチの利いた存在でなければならないが、そういう人は既に自国で音楽に没頭していることだろう。さらに INGER という稀有な存在を擁した SALTY DOG は Red Bull のコンテストで優勝し、Ozzfest や Summer Sonic にも出演するほどの規模まで活動を拡大させることに成功したが、それでも留学期間満了とともにビザの関係で脱退を余儀なくされた。

これ以外となると、もうプロミュージシャンとして来日して職業音楽家としての活動をする人ということになるが、これはもうメジャーの話だし、あるいは日本人の配偶者が居たら在留許可が出るだろうから、そういう存在の人であれば、日本で長期的に音楽活動を続けることができるだろう。

念のため言っておきたいのは、こういう法制度はどこの国にもあることで、外国人差別だ!という話では全くないということだ。その国の法律は、自国民のためにあるのであって、外国人は間借りしているに過ぎない。それが気に入らないという人は、政治家に働きかけて「日本で音楽活動している外国人は定職がなくても長居しても良い特別枠」を作るための法改正を訴えなければならない。残念ながら法の公平性という観点から、実現の可能性はかなり薄いだろうと個人的には思うが。

とはいえ、1-2 年ならばともかく、4 年あればなにがしかの事を成し遂げられる可能性はある。一方で、留学生あるいは外国人と意思を共有して音楽的商業的な成功を目指そうとするバンドについては、こういったリスクがあるということは頭に入れておかねばならない。

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