音楽

音で描く、音を描く

2017/11/22

音で描く

山下達郎と小田和正の二人は、おれにとって「二大声が耳にぶっ刺さる巨頭」だったりする。この二人の歌声を聴くと、とにかく無条件に耳と頭が持って行かれる。その声がそもそもそういう風にさせるのか、おれの身体が反応するのか、あるいはその両方でとてつもなくかみ合わせが良いのか、とにかくそういう風なことになっている。

彼らの音源を自分の意思で聴く時なんかは「ははぁ~これから拝聴させていただきたく奉りたく、畏み畏み申す~」くらいの勢いだ。とても作業しながら聴ける種類のもんじゃない。というかそもそも歌に吸い寄せられるので作業なんかできない(笑)。

この二人だけじゃないけど、名を成した歌い手というものは、一聴してそれとわかる特徴的な声というのもさることながら、その声が情景を想起させるという点も忘れ難い。

歌声は、半分メロディで半分歌詞なわけだけど、文字や言葉を語っているのであれば、他の楽器よりは比較的感覚に刺さりやすいのかもしれない。

楽器での比較を考えてみる。ギターで言うと、

■ギターってこんなに鳴るんだ:児嶋亮介 (INSIDE ME)、Kelly SIMONZ (2017/11/9 新宿 ReNY)
■ギターが歌ってた:Uli Jon Roth (LOUDPARK '16)
■ギターが喋ってた:Steve Vai (ROCK AROUND THE BAY '97)
■ギターが哭いてた:Leopardeath (2017/5/14 Club Citta')

こんなところかな。ギターに関してはボーカルよりある意味判断がわかれるところなんじゃないかと思う。その音に何を感じるかは本当に人それぞれなので、どれが良くてどれがどうという話でもない。

音を描く

小説で音の書き方というのは、結構重要なファクターなんじゃないかと思っている。どの方向からどんな音がどんな聴こえ方で聴こえるのか。これによって登場人物の動きやこちらの脳内での再現性も変わってくることがある。

ことに過去の時代を扱った小説では、まずとにかく人がいない。人口が今より全然少ないのだ。だから街を一歩出るともう物音がしない。聴こえるものと言えば、鳥のさえずりや風で草が揺れる音くらいだったりする。そういった環境での旅路の描写、行軍の様子、集落に入ってからの人が立てる物音の様子。これが物語を盛り上げるある程度大きな要素になっていると思う。

一方、音が大事なジャンルで「漫画」がある。正確には「擬音の書き方」かな。既に絵である程度情景描写ができているところにどうやって音を鳴らすのか、というのはある意味で漫画の永遠のテーマかもしれない。

音に関する漫画家で言うと、

■「BECK」のハロルド作石
■「聖闘士星矢」の車田正美
■「北斗の拳」の原哲夫

の三人を挙げたい。

ハロルド作石は、まさに「『バンドサウンド』を紙の上で鳴らした」という点。終盤はコユキのスーパーボイスが定番化して半ばネタ的になったかもしれないけど、前半の躍動感のあるバンドの描写は空前絶後と言っても過言ではない。他にも幾多の音楽演奏を扱った漫画があるが、足元にも及ぶものがない。それゆえに一説では「バンド漫画は売れない」と言われたジンクスを覆したという。

車田正美は聖闘士星矢で「鳴ってない音を描いた」という点。場面の切り替わりなんかで「ドドドドドド」とか「ゴゴオオオオオ」とかいう擬音が描いてあるんだけど、そんな音実際にはしてないんだろうと思う。でも「してそう」なんだよね。そして、ただポンと風景が書いてあるよりは、そのゴゴゴがあった方が重厚感があってより良いわけよ。

まあそういう意味では「ワンピース」でも「海賊王におれはなる!」「ドン!」てのがあるわけだけど、この「ドン!」はその世界で実際になった音ではなくて効果音というか心理的効果なわけじゃん。この「実際には鳴ってないんだろうけど、鳴った気がする音」を描けるというのは、漫画の強みなのかもしれない。

北斗の拳は「人間のうめき声や断末魔を最も的確に描写した」この点に尽きる。まあ今さら説明するまでもないかな(笑)。ひょっとしたら吹き出しの中身は武論尊が考えていたのかもしれないが。

というわけで、音には中身がないといけなくて、別の手段で音を描こうと思ったらそれはそれでまた大変。全く因果なことに手をつけてしまっておりますなあ我々は、という話。

-音楽