音楽

疾走感とは...?


Twitter でこんなことを書いてみたら案外反響があったので、補足もかねて。


要するに、速けりゃいいってもんでもないし、速くてもちゃんと聴けなきゃしょうがないって話。

近ごろ年換算で三桁の数のライブを観てて思うんだけど、難しいことをいっぱいいっぱいでやるバンドより、できることをちゃんと出してるバンドのライブの方が良い印象である確率が高い。

必死こいて楽器と格闘するのも別に悪いわけじゃないんだけど、せっかくのステージなのに終始それじゃもったいないし、フロアへのアピールをする暇と余裕が無い。

弾ききれる、歌いきれるギリギリのものをやってると、妙なスリル感は出るんだけど、それって偶然の産物じゃないかなとも思う。

できるかどうかわからないものを弾いてる場合には、どうしても音符の長さは不安定になりがちだし、セクションの切り替わりなんかで演奏が雑になりやすい。案外そこが重要なんだけどね。

だって何のためにフィル入れるかと言ったら、あと 1 小節で場面替わりますよ~っていう予告なわけじゃん。

ギターにしろドラムにしろもちろんベースにしろ、次のセクションの頭までちゃんと弾いてようやく前のセクションをちゃんと弾いたことになるということは見過ごされているように思う。

エンジニア立てたレコーディングなんかでよくあるんだけどさ、「これつながりますかね?」みたいなやつ。

前に弾いたデータに上に録り重ねていくときに、そのセクションだけ弾けばいいと思ってると、次のセクションとの間にわずかな隙間ができてしまったりする。これだと曲に一瞬無駄な空間ができてしまうので、やり直しになる。

ことはライブのステージでも同じで、時間とともに曲が流れていくんだけど、その流れをコントロールできるのは演者側だけで、フロアはそれをひたすら受け入れるという関係。そこは主従がはっきりしていて、演奏を聴かせるための音を出すのは演者しかいない。

そうであるならば、カウントした通りのテンポで曲が進んで欲しいし、出したコード感に合ったフレーズが入ってきて欲しい、とフロアの人間は思う。その上で、ステージ上での一挙手一投足を見て、フロアのオーディエンスはそのライブが良かったとかそうでもなかったと思う。

別にテクニカルでありさえすれば良いと言うわけでは全然ない。その曲が要求するフレーズを、ちゃんとそれぞれの音符の初めから終わりまで出すステージでの演奏であって欲しいと思う。そしてそれがよりフロアに届きやすい音であるんじゃないかな。

そして疾走感とは

極端なものを考えると分かりやすい。グラインドコアとかテクニカルデスのバンドの曲で、テンポ 250 以上とか 300 とかの曲がある。まあそういうのが好きな人は、それでいいんだけど(笑)。

じゃあ一般的なリスナーが、それが例えライブハウスでライブ観るのが好きな人を含むとしても、そういう人外の速さの曲や、テンポ 200 で 16 分音符 & ブラスト多用の曲やの曲を会場初見でちゃんと聴けるかというと、まあ半分いればいい方じゃないかな。

なぜそういうことが起きるかと言うと、「速すぎてよくわからん」になるからだ。

そういう曲は、よほどちゃんと (音作りも含めて) 弾かないと速すぎて音がつながって聴こえてしまうし、曲自体も「聴かせよう」と思うなら、それなりの仕掛けを用意して作っておかないといけない。そもそも多くのリスナーは、テンポ 200 の曲なんて普段あまり聴いてないから、速すぎると認識が薄くなる。

一方、150 くらいの速さの曲でも、展開がちゃんとしていれば、スリリングに「聴こえる」。というか、そう聴かせることができる。ボーカルの譜割りであったり、それこそさっきのセクションの代わり目のフィルだったりが効果的な役割を果たす。そういう曲は疾走感があるように「聴こえる」。

つまり、「疾走感がある」かどうかは、聴いた側にゆだねられていて、「どうだ?疾走してるだろう?」と思って演奏した曲が、「速すぎてよくわからん」とか「音が悪くて何やってるかわからない」になっていると、演者側が想定した疾走感は「なかったこと」になるわけだ。

さらに恐ろしいことに、そういう場合「オーディエンスの印象に残らない」という最悪の代償までも手に入れることになる。

そもそも音楽は、演奏する人と聴く人の両者がいて初めて成り立つわけで、演者が出した音をオーディエンスが受け取れないのでは、その関係は不成立ということになる。

もちろんこだわりも大事だし、「こういう曲を作って演奏したい」という欲求に忠実であることも大事だ。できるならそこに、「じゃあその音はちゃんと届いているか?」という検証項目を付け加えるといいんじゃないかなと思う。

もちろんおれも速い曲大好きだよ(笑)。だけど、速いんだけど速く聴こえない曲...というかステージの演奏ってのがあるのよね。

速い曲は好きなんだけど、それはそれが速く聴こえるから好きなのであって、速いんだけどドシャーッと音が出てるだけの曲よりは、だったら物理的にはそれほど速くなくても、疾走感があるように「聴こえる」曲の方が好きだな。

という個人的な見解。

盛大な余談

ちなみにアイキャッチに使ったこの画像 (版権フリー) なんだけど、

バイクでこういうバンクした状態の画像があるじゃん。迫力があるわけよ。いかにもモータースポーツだなって感じがする。

だけど、よく考えたら、こういうフルバンク状態ってコーナリングで一番スピードが落ちてるところなんだよね(笑)。場所によっては二桁の速度だったりする。ギアも落ちてるし。だいたいこんな倒して 300km/h 出るわけない(笑)。

いかにもモータースポーツな絵ヅラと実際の速度 (速さを求めるのであれば) は、一枚の画像にした時という条件に限れば、むしろ反比例する。

というわけで見た目と実際は必ず一致するわけではない、というわりとどうでもいい小噺。

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