社会

歩けるからと言って車を安全に運転できるとは限らない


高齢者による交通事故についての報道が多い今日この頃。

道路交通法には安全運転に専念する義務ってのがある。

■ 第七十条 (安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=335AC0000000105_20170312#S (e-Gov/法務省)

しかし高齢を理由に運転を禁止する法律って無いわけよ。

そもそも高齢だからと言っても、普通に運転できていればいいわけで、事故が起きるから問題になる。

自動車の運転が免許制度、つまり公的な許可を受けて初めてできることだとは言え、年齢を理由に一定年齢以上の人間は運転を禁止するとなると、法律を作るしかない。さらにそれは人権問題になる可能性が高い。

なぜなら高齢者の運転免許保有者で事故を起こすのはほんのわずかだから。

■警察庁資料 (平成 29 年度)
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移 (P.19)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/H29zennjiko.pdf

警察庁の資料によると、事故を起こすのは 80 歳以上高齢者より 10 代の若者の方が二倍くらい割合が高い。

高齢者を年齢により規制しろというのなら、同じ以上の理屈で、免許は二十歳を過ぎてから、ということになる。

別の資料でも同じことが言える。

■警察庁資料 (平成 29 年度)
高齢運転者による死亡事故に係る分析について (P.15-24)
https://www.npa.go.jp/toukei/koutuu48/H29siboubunnseki.pdf

上記の二資料では交通事故件数、死傷者数ともに減少していることが読み取れる。

となると、交通行政は円滑で効果的に機能し、世の中は年々交通事故に遭いづらいようになっていると言うべきだ。

ということは、特徴的な事故の発生、そしてその報道が増えた、あるいは目に付くようになったと言うべきではないだろうか。

さりとて、悲惨な事故をそのまま放置していいとも思わない。

となると、なんらかの効果的な対策を講じないといけないと思うのだが、個人的には、短期的で抜本的な対策は無いと思う。残念ながら。

自動車の運転に必要な動作とは

その前に、運転に必要な動作とは何かを考えてみる。

最近の高齢者の事故報道ではよく「アクセルとブレーキを踏み間違えた」というのを見かけるが、ハンドル操作を誤ったというのはそれほど多く見ない。

ということで、今回はここに焦点を絞る。つまり、足の操作を間違えなければ、事故は減る。

日常動作でアクセルやブレーキペダルを踏むのに、足を腿から持ち上げてドカーンと踏みつける人はいない。

モータースポーツでもやらない。そういうのは緊急時の操作だ。もしやってる人がいたら運転が非常に下手な部類に入るので悔い改めて欲しい。

ペダルを踏むには、かかとを地面につけて、足首の屈伸でペダルを踏んだりゆるめたりする。

現代の AT 車 (2 ペダル車) ではほぼ 100% 右足だけで操作する。左足ブレーキを使う人はごく稀だ。

アクセルを踏むには、ふくらはぎの筋肉 (下腿三頭筋) を縮めててこの原理で足首を伸ばすようにする。

緩めるにはその逆、ふくらはぎの筋肉を緩めればいい...と思いきやそうでもない。

ペダルを緩めるには、すねの前側の筋肉 (前脛骨筋と前脛骨筋) を使う。ここを縮めてつま先を引っ張り上げる。

だが、このすねの前側の筋肉は足首の根元についてるために効率が良くないし、筋肉量自体もそれほど多くない。

ということは、ペダル踏みつける動作より、足を離す動作の方が実体化しづらいということだ。

つまり、

歩けることは運転できることにつながらない

高齢者の運転で「歩けるんだからいいだろう」みたいな反論に遭って免許を返上させられないといったような家族の声が報道されることがある。

歩くためには、最低限以下の動作が必要だ。

1. 重心を行きたい方向に崩す
2. どちらかの脚を持ち上げる。
3. 崩した重心を持ち上げた脚と足を使ってその足が置いてあった場所とは違う場所で支える。
4. もう片方の脚を引き付ける。

このような動作を繰り返すことで、「歩く」ことができる。

ちなみに今回の記事で言う「足」は足首から先のことで、「脚」は胴体の下端から足首までを指すので区別してね。

歩くためには、太ももの筋肉だけを使って脚を持ち上げ、別の場所に置くという動作ができれば歩けてしまう。

太ももの筋肉だけを使って歩く人は、オジーみたいなヨチヨチ歩きになるか、足音がペタンペタンと鳴るいわゆる「ペンギン歩き」になる。

じゃあ多くの一般人が歩く時にはどうしているかと言うと、上記の四動作に「地面を蹴る」という動作が加わる。

地面を蹴ることで、「かかとで着地して、つま先で蹴る」という「普通の歩き方」が実施される。

ところが、この蹴る動作にもすねの前側の筋肉はあまり使われない。ふくらはぎの筋肉だけでもできてしまうのだ。

歩きすぎた時にふくらはぎが痛くなる人はいるが、すねの前側が痛む人はほとんどいないのはこのためだ。

要は、すねの前側の筋肉は普段あまり使わない筋肉なのだな。

そして、運転するにはこのすねの前側の筋肉が必要だ。これはスポーツ経験者で筋肉の動きについて詳しく考えたことがある人でもなければ、盲点だと思う。

というわけで、「歩けるかどうかということは、運転に支障がないことを直接は担保しない」ということがご理解いただけるのではないかと思う。

ついでに言うと、蹴る動作には足首の可動域が十分あるかということも関わってくるが、普段から地面を蹴らずに歩いている人は、足首を前後に動かす必要性が減るので、関節が硬くなる。

関節が硬くなると可動域が狭くなる。加齢で筋肉量が減っていけばなおさらで、さらに動作の速度も遅くなる。

高齢者が運転できるかどうかを判断するには、歩けるかどうかではなく、

■ 蹴る動作ができるか
■ 足首の可動域が十分にあるか

の二点で判断しないといけない。

具体的にどんな動作で判断するかと言うと、

1. 何もないところでつまづく/転ぶ
蹴る動作ができていないために、足首が下がったまま脚を前に出して、つま先が引っかかって転ぶ。(若い人にもいる)
2. 階段の段差を踏み外す
足首が下がったまま階段の段差を超えることはできたが、足首を持ち上げられないので、上の段に置く脚の面積が小さすぎるためにかけた体重を支えられないで踏み外す。

このあたりだろうか。

そして、上記で言ったような筋肉の使い方をしながらペダルを操作し、加減速をする。当然、ハンドルも操作する。

これらの動作を自分の運転状況、自分がいる交通状況に応じて瞬間的に行いながら、自車の周囲の状況に気を配りつつ、さらに二台前の車の動きを見て数瞬先の予測をする。

これを時速数十キロ、つまり、1 秒間に 10m 以上動く速さの中で行う。(10m/s = 36km, 20m/s = 72km/h)

自動車の運転というのは結構高度な作業なのだ。高度というか、瞬間的な動作を多層的に組み合わせると言った方が正確かな。

事故対策を考えると言いながら、ペダルを踏む動作の解説に費やしているうちに長くなってきたので、次回に続く!(笑)

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