音楽

形がないものを言葉に変換する力


機材のレビュー動画なんかに人気のあるミュージシャンが出る。

それは、そのアーティストに親近感を持っている人や、あのアルバムの音良かったなと思っているバンドマン向けに、この人が使ってるんだったらいい音するんじゃん?と思わせて買ってもらおうという戦略だろう。

それ自体はそれでいいと思うというか、宣伝って昔からそういうもんだ。

ただ、その機材を解説しているミュージシャン側に伝える力が乏しいことば時々ある。

ここを回すと「いい感じ」になるとか、「ギャーンとくる」とか、だいたい漠然とした言葉か擬音であることが多い。

音楽界隈は擬音の使用が非常に多い。「ブリッとした感じ」とか「気持ちいいズクズク」とか言う。

文字にするのが陳腐に思えるなほどにありとあらゆる擬音が使用されている。

ただ、それは気心知れた相手、あるいは程度の上下はあるにしろ音楽を理解していて共通認識がある人に向けてはいいと思うんだけど、そうじゃない人に対しては伝わりきらないことがある。

まあ、動画であれば実際音も載せられるのでそれでほぼほぼ伝わってしまったりするのかもしれないが、紙媒体などでの文字だけだと「ギャーン」がどんな「ギャーン」なのかは正確には伝わらない。

ミッドに充実感のある歪みとか、クリアかつラウドな鳴りと言ってくれた方が、より伝わる可能性は上がるだろう。

ミュージシャンだから音で伝えられればそれでいいんだろうし、そこに隙があるからおれみたいな文字書きにも多少需要が発生するから一面ではそのままでいいよと思わないでもない(笑)。

まあそれはそれとして、文字や言葉にも出来た方がより可能性が広がるという意味で、言葉の重要性というのを言っておきたい。

ギャーンを相手の脳内でどう鳴らすか

ただ単に「ギャーン」という文字が紙に書いてあって、それを見た人はどう思うだろうか。

ギター始めたばかりの高校生なら天をも貫くような轟音を想像するかもしれない。

レビュアーのことを知っている人なら、こないだ出たアルバムのギターの感じかな?とある程度推測できるかもしれない。

楽器に知識のないひとなら、怪獣か獣の鳴き声と思うかもしれない。

モータースポーツが好きな人なら、レブリミット寸前の高回転域のエンジンの音と思うかもしれない。

まあ、楽器を知らないモータースポーツファンは機材レビューの雑誌は読まないと思うけど(笑)、極端に言ってこんな感じ。

言語が成立するためには、その文字がどういう概念なのかを書き手と読み手が共有している必要がある。

ところが、擬音にはそれ自体に意味があまりないので、その関係性が成立しづらい。

「いい感じにギャーンとする」だけだと何がどうギャーンなのか伝わりづらい。

ギターで言えばパワーコードのギャーンなのか、ギターソロの入りのチョーキングのギャーンなのかは、書き手の意図とは関係なく受け手によって変わる。

それを補完するためにそのほかの言葉を使えばいいわけだけれど、だったら最初から擬音を使うのをやめて他の言葉を使えばいいんじゃないかなという気がしないでもない。

とはいえ、機材のレビューを見て機材を買おうとする人もやっぱり擬音を多用する人種なので、ある程度のバランスが必要なんだろう。

このギャーンとする感じが良くて、中低音の鳴りがしっかり出せますね、みたいな感じで。

とはいえ、動画だと時間のしばりがあるし、文字だと字数制限があるしでなかなか万全に解説するというのは厳しいものがある。

そして、最大の問題は、音の受け取り方は人それぞれだということ。

たとえレビュアーのファンだったとしても、その音は趣味じゃないとか、あるいは今作ってる/これから作りたい曲や作品に必要なのはそういうのじゃない、というようなことが起きる。

だから...、結局だいたいでいいってことなのかなあ?(笑)

まあとにかく、長嶋茂雄はレビュアーにはあんまり向てないんじゃないかっていう話。

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