音楽

自分に値段をつける


ネットでちょくちょく見かけるものに、金銭トラブルの話がある。

大量の作品をほとんどタダみたいなギャラで依頼されたとか、納品後に言を左右にして支払いがされないとか。

友達だからといって無償での提供を要求されたり、あるいは大幅な値引きを要求されたり。

見ている限り、音楽関係よりはイラストレーター、デザイナーの方が多いかなという気はするが、どこの業界も似たり寄ったりだと思う。

こうしたトラブルを防ぐには書面で契約書を取り交わしたり、「私はプロでやっているので費用はこれくらいかかります」と突っぱねる勇気が必要だったりする。

が、書面で取り交わす慣習が無い界隈もまだまだあるし、人間関係が荒れるのでそうやって突っぱねることに抵抗がある人も多い。

さらには、駆け出しのアーティスト(分野問わず)だととにかく仕事をすることが第一になるので、半ば赤字覚悟でそういった依頼を引き受けてしまい、「前回これくらいだったから今回も同じ値段でやってよ」という悪循環に陥りがちという面もある。

「額を上げさせてください」と言うと「じゃあもういいよ」と切られてしまうのが怖いので、なかなか言い出せず低料金の仕事に膨大な労力を注入しつづけざるをえなくなる。

自分の作品や自分に値段をつけるのはなかなか難しい。

かく言う自分も得意ではなかったりする。

世に出せる実績や異業種の人でも一目でわかる数字を出した経験があれば値段交渉も対等以上にやりやすいかもしれないが、なかなかそうもいかない。

音にしろ絵にしろ、デジタル処理でほとんど完結するようになった昨今では、作品を世に出して仕事を請け負うルートが広がったという面があるが、反面として分野全体のコストが下がったこともあり、新しく打って出る人には平均以下の単価で依頼がまわってきやすいというデメリットもある。

このブログでも折に触れて「プロになりたきゃお金の計算ができるようになれ」というようなことを言っている。

プロというのは仕事として依頼を受けられる人のことで、それはつまり納期を守れる人のことであり、予算に応じた作品を納品できる人であり、価格交渉ができる人であり、お金の計算ができる人のことでもある。

つまり、プロとは自分で自分に値段をつけることができる人ということになる。

依頼を受ける段階ではまだ作品は世に出ていないわけだから、依頼はその人に来る。

自分に値段がつけられない人は、無茶な納期の依頼を受けてしまうし、相場以下の値段で受けてしまう。

そもそもクリエイターも仲間同士のつきあいはあるが、そこで自分がいくらで仕事をしているかなんていう話はあまりしないし、相場の値段なんて一応あるが、依頼内容によってどうにでも変わる。

さらには、あくまで趣味でやっているとして利益を求めない価格設定で販売する「非常にクオリティの高いアマチュア」もいるので、どうしたって単価は下がる傾向にある。

まあ逆に言えば、そういった諸々の条件を振り切って「私の値段はこれです」と言い張っても仕事の依頼が来る人だけが、プロとして一人立ちできるとも言える。

そういえば各業界に専門学校があるけど、技術指導だけじゃなくて価格設定や値段交渉の指導ってしてないんだろうか。

どの分野でも日々新しい才能が現れて、技術や作り方も日進月歩で進歩する。時には異分野と融合したりもする。

今流行りで脚光を浴びている人も数年後には過去の人になっていたりする。

「プロのアーティスト」になるということは、そういう厳しい環境に身をさらすということでもある。

-音楽

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。