社会

時代と職業の変遷


AIの発達によって、今後今ある職業の何割かは淘汰されていくだろうと言われている。

そりゃそうなんだろうなとは思う。

しかしながら、技術の進歩に伴う効率化の進展というのはなにもAIから始まるわけではない。

PCが普及してネットワークに個人が接続されるようになった現代では、それ以前、1980年代以前よりものすごく効率化されている。

昔は仕事の見積もりは手書きで書いていたので、一行間違えるとやりなおすために数十分かかったわけだけれど、今は一項目増えたところでピピっと打ち直して終わりだ。紙に出力する時間の方がかかるくらいだ。

今のデスクワークの会社員は前世紀の人に比べて何割か多い仕事をしている。ものによっては数倍の仕事をしている人もいる。

こういう効率化の歴史というのは人類の歴史そのものと言っていい。

文字の発明というのは、情報の伝達の保存の正確性の向上に寄与した。

活版印刷の発明は、情報の均質な伝播に寄与した。

人間は長らく徒歩とせいぜい馬にのって移動するくらいしか陸上の移動手段がなかった。

その時代においては海上輸送の効力はとても大きかった。

産業革命期の鉄道、20世紀になってからの自動車の普及は移動と輸送に革命的な効率化をもたらした。

自動車の輸送効率の向上にともなって航路が廃止されたところもあるし、馬車輸送なんてものは消えて無くなった。

業界自体がなくなってしまえば職業としての「御者」も失業、消滅する。さらには馬を売り買いして現場に供給していた業者、日本でいうところの馬喰(ばくろう)もいなくなる。

中世によくあった「旅の商人」なんてのも現代にはいない。

現代では、情報をネットワークで送るようになったので、「個人が送る手紙」の文化が衰退してきている。

年賀状なんて送らないという人も増えたし、そもそも知人の住所を尋ねるという文化がなくなったように思う。

若者に至っては固定電話を初めて使ったのは就職してからなんていう嘘か本当かわからない話もあるくらいで。

というように、技術が進歩し、産業の中枢が移動していくにつれ、興隆していく業種と衰退していく業種がある。

それにともなって失業していく人も当然出るだろうが、経済活動がより活発になるのであれば再就職の口はあるのでトータル見るとOKだと考えるのが普通だ。

ところが、AIの進歩、普及というのは今までの産業構造の変化とは異なるものである可能性がある。

それは人間の順化よりAIがその業界を覆う速度の方が速いのではないかという点だ。

すなわち、AIにより効率化が進んで失業する人が出るが、それがもたらす効率化もまたAIによってカバーされてしまう。

そして新たに起こった職業や新たにできた働き口の数は、失業者より少ない...かもしれない。

現在、AIは既存の情報を処理してパターン化すること、あるいはそれにより一定期間の予測はできるが、全く新しい発想はできないと言われている。

つまり、最先端を超えられないということだ。新しい産業は人間の手によってしか生まれない、と言い換えることができる。

また、AIの普及により人間の産業は淘汰されるばかりとも思わない。

AIの効率化の恩恵を個人の日常使用のレベルに落とし込むサービスが生まれるだろうし、飲食産業なんかは無くなることはないだろう。

攻殻機動隊のように首にネットワークを接続するようになるとそれに伴う産業が生まれるだろうし、人間の体にチップや機械を埋め込みそれにより活動するのが普通という社会ができるかもしれない。

その場合にはそれに伴う産業が生まれ、その社会に適合しない産業は衰退していくだろう。

その未来の社会では「充電切れた」という表現が物理的な状況を表すものになっているかもしれない(笑)。

ネットワーク化以前の時代に今の人間がもう戻れないように、携帯で着メロを三和音で作っていた時代にスマホの時代の人間がもう戻れないように、人間は効率化を進めることはできるがそれを落とすことは基本的にはできない。

石油が全く枯渇するとか、先進国の生産設備が大規模な戦争によってほとんど同時に壊滅するとかでもなければ。

今よりAIが普及して日常レベルにまで及んでくるということは、ネットワーク経由での情報処理速度が肝要になってくる。

そうすると5Gでははっきり言って不足だ。8Gとか10Gくらいのレベルでテラバイトのデータをミリ秒で送信でき、それを安定的に送受信できる環境が必要になる。

そしてそのための技術開発が必要で、そこに新しく生まれた技術を使って産業の裾野が形成される。

今の人間の手に余る技術開発の余地はまだまだたくさんある。例えば常温核融合、量子コンピューター、ヘリウム3によるエネルギー供給などなど。

AIが全くの未知を自ら切り拓くことができ、それが人間の速度を上回るようになれば、多くの人間が失業するだろう。

ただそうなった場合はもう人間はAIに使役される立場になるので、失業や職業選択の心配をしている場合ではなくなる。

人間が人間社会の作り手であり続けるか、映画マトリックスのようなディストピアを作るかは人間の手にかかっているというのも皮肉な話だ。

ただそれは今いる人間よりもうちょっと先の時代の人間が心配することだろう。

近々、10年20年レベルの失業の心配とはまた別の話であるように思う。

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