音楽

音楽の未来 - 2100年ディストピア編


YouTubeやAmazonやiTunes、Spotifyなんかのウェブ上のサービスで「あなたにおすすめ」みたいなのが出るじゃない?

それはその人の視聴履歴といわゆる「ビッグデータ」を基に算出されて表示されている。

一方、コンピューターシミュレーションで現時点で地球シミュレーターや台風の予測なんかもできるようになっている。

そんな膨大な要素を勘案した予測に比べたら、たかだか12音階で構成されている今の音楽を予測的に生み出すことの難易度はだいぶ低いだろうと思う。

むしろ既に生み出されている数百万かひょっとしたら数億に上る楽曲を読み込む方が時間かかるかもしれないくらい。

高度なAIが過去に発売された音楽から適切な要素を抽出して、個人の好みに合うように再構成して提供する。

こういうことが遠からず、数十年以内にできるようになるんだろうと思う。

ようするに「お前の好きなのはこういう曲だろ?」とAIがぶん投げてくれるようになる。

それは、新しい音楽に対しての感動ではないが、過去から現在における人生のある時点で好きだったものによく似たものを作り出すことができる。

最近のネット配信が音楽の完成から視聴者への到達時間を劇的に圧縮したとはいえ、巨大コンピューターが半自動で生成する速度に人間はかなわない。

そしてその便利さには対抗できない。

今現在の我々のように音楽は「誰か」が作り出すものという考えが常識である世代にとっては、これは違和感がある話かもしれない。

が、これから音楽を聴き始める世代にとっては、音楽はスマホ(ですらないかもしれない何らかの端末)から引き出すものということになるだろう。

そうすると音楽の在り方は全く変わったものになっていく。22世紀の頭くらいにはそうなっていてもおかしくない。

まるで、1900年と2000年での音楽の在り方が全く違ったように。

むしろ、2100年の音楽の在り方が2020年と同じであると思う方がおかしい。

その頃には音楽の在り方というのは今とは全く異なったものになっていて、まあ生身の人間が奏でる音楽というものが死ぬことは無いだろうが、ひょっとしたらヒット曲という概念もなくなっているかもしれない。

音楽は結局その個人がその曲とどう向き合うか、その曲をどう評価するか、どう感じるかという話なので、そこを突き詰めると、個人の「視聴履歴」の中に集約されていくだろう。

音楽体験と個人

数万人規模のライブコンサートが現在既に各地で開催されているが、音楽を一度に多くの人数に届けるという点で言えば、ある程度到達点を迎えているだろう。

これ以上、数十万人、数百万人に一度に届けるとなると自ずから制限がある。物理的な制約だ。

なにしろ音楽は波なのだ。

現在ですら数万人規模のコンサートでは、後ろの方に入る人に音が届くのにタイムラグが発生している。

これを解消するには、各個人に直接ゼロ距離で届けるという発想に転換する必要がある。

現在SFとされているフルダイブ型のVRや、攻殻機動隊のように人体に直接結線して情報を送り込むような形でのみその問題が解消される。

これは空間的な制約を超えて世界中どこのコンサートにも自宅から行ける上に、今よりずっと近いところで感覚に作用するので、よりリアル(と感じる)な音楽体験を得ることができる。

なんなら時間的な制約も超えて、過去に行われたコンサートを今自分がアクセスしたこの瞬間に開催しているように体験できるかもしれない。

もちろん、コンサートやフェスの会場への行き帰りに友達とわいわいやったり、フェスの途中で特になんでもないけど会場をぶらぶらするのがいいんだよという人もいるだろう。

だが、それはそれがあるということを知っているから、そう思う。

もうそういう情報や概念が存在しなくなったら?

コンサートというものは、自宅からヘッドセットを装着して味わうものだということが「常識」になったら?

2100年は令和生まれの最初の世代のさらに孫の世代だ。その頃には「常識」もずいぶん変わっていることだろう。

もしかしたら、生身の人間が生み出して生で演奏する音楽はほとんど滅びているかもしれない。音楽産業というものが何か別の形になっていたり、どこかの産業の付属物になっているかもしれない。

世の中全体が日々新しいものに変化していく中で、音楽だけが現状のままでいられるはずがない。そのままでいるものは相対的に衰退していく。

もちろん時間の淘汰を経ることで、伝統として存在し続けるものもあるが、我々が関わっているポピュラー音楽というのはそういうものではない。

常にある飢えを満たすように音楽を求めている音楽シーンとその関係者は常に新しくなければならない。

が、その飢えはAIによって満たされてしまうかもしれない、という話。

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