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ラグビーアイルランド代表とブレグジット


世界史を見ていると「またイギリスか」とか「またイギリス人のせいで」というようなことが、残念ながらよくある(笑)。

たとえば、最近話題のロヒンギャ問題は元はと言えばイギリスの植民地政策が元凶だし、パレスチナ問題もイギリスの三枚舌外交が原因。

タスマニア島から先住民アボリジニが絶滅したのはイギリスがやったことだし、他にも世界中に色々ある。

日本で一口に「イギリス」と呼ばれているのは、United Kingdomのことだが、国名が一般名詞というあたりが彼らの気位の高さを表している。

これは「『連合王国』と言ったら当然おれらのことだよな?当たりまえだよな?ん?」というような感じだ。日本の伊勢神宮が正式には「神宮」だったり皇族に名字がないのと同じ。

固有名詞で特定する必要がない、ということ。

ついでにカナダやオーストラリアを加えた日本では英連邦と呼ばれているものも "Commonwealth Of Nations" と呼び、つまり「共和国」あるいは「連邦国」なわけだ。

まあその気位の無駄な高さのせいで世界中に問題をまき散らしたわけだが。

イギリス(UK)の正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」{United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)なわけだが、この北部アイルランドというのが結構重要だったりする。

イギリスの地図はこんな感じだな。

で、UKは四つの国から成る。こんな感じ。

その国境を書いてみる。

緑の線で描いたところが、北部アイルランド、一般に北アイルランドと呼ばれるところと、別国家であるアイルランドとの国境。

つまり、イギリスは陸続きでアイルランドと国境を接しているということだ。

長らくUKの植民地だったアイルランドが独立したのはわりと最近で1922年。

この時、北部地域、今の北アイルランドが宗教の違いを理由にUKに残った。

アイルランドはカトリック、UKは英国国教会だ。

この英国国教会というのもわりとめんどくさくて、英国王ヘンリー八世が当時の王妃と離婚して別の女性と結婚したかったんだけど、カトリックでは離婚が禁止されていたので「じゃあもういい」と言ってローマカトリックから分離して英国国教会を立ち上げたことによる。

ついでに言うと、当時の嫁さん(キャサリン・オブ・アラゴン)はスペイン国王でもある神聖ローマ皇帝カール五世の親戚だったりする。そりゃ離婚できないわ(笑)。

最終的にはヘンリー八世はキャサリンと離婚(婚姻無効)して、知っている人は知っているアン・ブーリンと結婚することができた。

親戚を無体に離縁された神聖ローマ皇帝カール五世は激おこでヘンリー八世を破門する。

当時のカトリックにおける「破門」は、公民権停止というか法の保護から外れる、言ってみれば欧州全体での村八分みたいなやつ。

仕事にも就けないし破門された人を殺しても罪に問われないというすごいやつ。

ところが、ヘンリー八世は「うちカトリックじゃないから関係ないもんね」とガン無視。

まあ、その後アン・ブーリンは男の子が生まれなかったのと政敵が多すぎたせいで逮捕・処刑されてしまうんだけどね。

って本題に入る前に話が終わってしまう(笑)。

まあこの辺のイギリス王室のぐっちゃぐちゃな人間模様(超ドロドロ)は様々な映画小説ドラマになってるので探してみてね。

本題(笑)

さて、現代の話。

日本でラグビーのワールドカップが開催されてるんだけど、そこに「アイルランド代表」が出てる。

イギリスからは、ほかにイングランド、スコットランド、ウェールズの代表が出てる。

あれ?北アイルランドは?と思ったら、この「アイルランド代表」は、アイルランドと北アイルランドの合同チームなんだな。

サッカーは、アイルランド代表と北アイルランド代表がそれぞれいる。うーん、めんどくさい(笑)。

まあ歴史が込み入ってるからね。ついでに言うと国歌もIreland's Callというアイルランド共和国(北アイルランドを除く)の国歌ではないものが歌われるのだとか。

ブレグジットと北アイルランド

で、ラグビーだとアイルランド島の統一はできるのだが、政治となるとそうはいかない。(サッカーでもできてないけど)

今はイギリスもアイルランドもEUなので、特に北アイルランドでの国境の検問はほとんど廃止されている。

ところがEU(前身のECを含む)発効以前の80年代までは、アイルランドと北アイルランドの国境問題は深刻な政治問題だった。

アイルランド島の統一(北アイルランドのイギリスからの分離)を企図するIRAが70-80年代に頻繁に爆弾テロを行った過去がある。

それにイギリスとアイルランドは同一経済圏なので、物資と人の往来は非常に活発だ。

現在も北アイルランドの国境は年間数万台のトラックの通過があると言う。

ところが、ブレグジットでイギリスがEUから抜けると、北アイルランドに再び明確な国境ができる。

北アイルランドのすべての国境で、入国・出国の審査、手続きをせねばならず、通関業務も発生する。

面倒とかコストがかかるとかならまだなんとか処理のしようがあるが、ブレグジットの最も大きな問題は、「北アイルランド問題が再燃するのでは」という危惧だ。

一度、ほとんど名目上のものにまで薄められた国境が再度明確なものとして人々の生活に影響を及ぼすと、「やはりアイルランド島は統一されるべきだ」という意見が出てくる。

それに対して「ふざけるな、北アイルランドはイギリスだ」という反発も生まれるだろう。

こうして政治的対立が生まれ、それが先鋭化すると、IRAのように実力行使に出るものが出ないとは言えない。

なお、このブレグジットと北アイルランドに関わる問題は、日本にも影響を及ぼす。

ハードブレグジット、合意なき離脱が決定的となった現在、イギリスは日米との経済的な連携の強化を模索している。

ユーロ圏ではないとはいえ、ただでさえ経済的にはジリ貧となるところに、政情不安になったりテロが起きたりするとポンドの価値は下落する。

それはイギリスと直接取引のある企業に影響があるのはもちろん、世界経済の足を引っ張り、巡り巡って日本全体にも影響する。

日本がイギリスとなんらかの提携を結んだり、現状をさらに強化する自由貿易協定を結んだ後に、こういったことになれば、その影響はより増大する。

ラグビーの試合で良いものみたなあと思う反面、国全体、政治や経済、まして国家同士の国際関係となるとなかなか「良かったね」じゃ済まないことも多いなあと思う。

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