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創作と商品の兼ね合いの話


さて、身もふたもない話をしようと思う。

バンドがなんでレーベルと契約するかと言うと、もうズバリ「その方がより売れるから」なわけよ。

別に売れなくていいっていうなら、そもそも販売なんてしなくていいし、金取ってライブやっちゃダメでしょって話になる。

あるいは、既にコアなファンが一定数いて、これ以上売れなくても別にいい、製作費の回収が現状できてるからこの規模を維持して趣味のままでいい、と言う人はレーベルと契約する「必要がない」とも言える。

そういう人はむしろレーベルと契約した方がもっと売れるんだろうけど(笑)。

おれは商業主義と決別するんだ!好きな音楽を好きなだけやるんだ!と言う人は、ネットの世界で作った曲を発表してればいい。

別にライブハウスでライブやらなくてもいいし、それこそ盤なんて作らなくていい。

2015年くらいからこっちの音楽の売り方は、それ以前と明確に考え方を変えた方がいいかもしれない。

音楽をやることだけをやりたい人は、視聴回数が増えようがどうしようがネットに音楽を上げるだけにするということができるようになった。

逆に、YouTubeに曲をアップしてたらYouTuberみたいになっちゃった、みたいな人もいた。今は厳しいかもしれないけど。

音楽に限らず、漫画やイラストなんかを描いてる人、小説を書いてる人なんかもそういう活動ができるようになった。

「ただやりたいからやる」だけを公開した状態で出来るようになった。

そして、もう「他人からの評価なんかいらない」と言う人は、公開すらしないという手段だってある。

自分の創作物が世に広まって欲しいけれど、自分の持っているツールでは限界がある。だけどそれ以上に広めたい、と言うときにレーベルや出版社の手を借りるわけだ。

だけど、そこで問題になるのは「創作者が良いと思っているものが、『商品』として売れるものとは限らない」ということだ。

例えば非常にニッチなジャンルのものだと買い手の数が限られるし、過激な表現のもので世間が許容する以上の内容だったりすると、それを商品として大々的に宣伝するわけにはいかないとなる。

創作物が商品になることもあるが、そうでないこともある。

レーベルや出版社には売り方としてのノウハウがある。

それを元に「こういう作品を作って欲しい」とか「こういう曲を入れて欲しい」というような要求が来ることもある。

あるいは、「アルバムの一押し曲はこれにする」とレーベルが言う場合だってあるだろう。漫画だったら「こういうストーリーに持っていこう」と編集者が言うかもしれない。

それは、それを商品として売るための行動なわけだ。

それを許容するかどうかは、最終的には創作者の判断になる...と言いたいところだが、それが完全にできるのはインディーズの場合で、メジャーシーンに行ってしまうとそうも行かなくなる。

なぜならメジャーシーンでは一から十までが商業行為だからだ。

企業体だから、売れる可能性が少ないものを労力をかけてセールスするわけにはいかないのだ。

景気が良くない状況が続いているので、企業は売れる見込みが立たないものを発売しづらい。

だから、何かが一つ当たると、似たような雰囲気の作品がゾロゾロ出てくる。それはある意味では仕方がないことではある。

その中で、かつてない作風のものを売ってくれと言うなら、それがどれくらい売れるのかということを示さないといけない。

今までは、それは必ずしも創作者のやることではなかったかもしれない。

だが、現在ではSNSなんかで作者本人がそれを世に問うことができる。

不思議な時代になったものだ。

だから、逆にいくつか作風の違うものを作って、どれがよりウケるかというマーケティングをすることだってできる。

とにかくセールスの数字を出したいのか、作家性とセールスの両立をしたいのか、作家性の満足だけを追求するのか、やり方は色々ある。

その取捨選択の中では、当然レーベル契約、出版契約がいるのかいらないのかということも入ってくる。

選択肢が増えたことは確かだが、作品を世に問いたいなら一つ言えるのは、創作者の判断がより重視されるようになっているということだ。

それは創作者の創作者としての判断ではなく、それをどうやって世に問うかという、ある意味ビジネス的な視点での話だ。

21世紀になったばかりの頃、音楽シーンでは「これからはセルフプロデュースができないといけない」ということが言われていたが、2015年以降は、それに加えて経営判断ができないといけない時代になっていると言える。

大手の企業が売れるものしか売らなくなった時代である反面、好きなことを好きに売れる時代になったとも言えるのだが、その一方で、市場の細分化が進み、以前より格段にヒットするものは出づらくなっている。

そういう世の中で専業創作者を目指すのであれば、むしろ自分で売り方をチョイスできる能力が必要になっているというのは、なんとも皮肉な話ではある。

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