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病気「かもしれない」人は拘束できない


新型コロナウイルス(新型肺炎)の騒ぎで、政府専用機で帰国した人が帰宅しているという話。

まあ普通に考えると「え?隔離しないの?」とは思うが、法律が無いからどうしようもないというのが実情だろう。

インフルエンザも、今でこそ罹患した人は登校停止、出社禁止など言われることが当たり前となったが、実は明確な法的な基準というはないらしい。

新型肺炎の発生地域から政府専用機で帰国した人を隔離して経過観察するには以下のような法律がいる。

・政府が特定の病気Aを国として特別な扱いをするという法律
・特定の病気A「かもしれない」人を拘束してよいという法律
・特定の病気A「かもしれない」と政府から言われた人は隔離措置を拒否できない法律
・政府から指定された医療機関は該当者の隔離措置に協力する義務を負う法律

要するに予防拘禁ってやつだ。「かもしれない」人を法に基づいて拘束する、言ってみれば逮捕するに近い。

めちゃくちゃ人権侵害なわけだ。

今の日本の法律では緊急事態を想定しているものがあまりない。なぜかと言えば、憲法でそういう想定の条項がないから。下位の法律や運用でなんとかしないといけない。

これができるようになるには、まず「政府が緊急事態を宣言すれば人権を制限できる」というコンセンサス(社会的合意)が形成されないといけない。

常識的な人なら「しょうがないんじゃない?」と思うかもしれないが、「人権派」や左派は大反対するだろう。

それに隔離している間の就業保証や賃金保証の問題もある。

あとは、「帰国したい人は政府専用機に乗ることができますが、チャーター機のため市場価格よりだいぶ高額な実費(今回は8万円)が請求されますし、2週間は家に帰れません」となった場合に、実効性が下がるだろうという問題もある。

まあ、それがイヤだって言う人には自己責任かもしれないけどさ。

入国制限できるか

数百人の日本人を帰国させることもそれはそれで大事なのだが、むしろ発生地域からの入国者を制限した方が効果は高いだろう。

が、今のところ致死率は2003年のSARSよりはだいぶ低いだろうと思われる。

武漢の人口は1100万人と言われている。中国政府が発表してWHOが認定している感染者数は5997人、死者数は132人。中国外では68人が感染、死者はまだいない。

Novel Coronavirus(2019-nCoV) Situation Report - 9 (WHO)

ということは、罹患率が0.05%、そのうちの死亡率は2.2%でしかない。

国外での死者がまだ出ていないこと、SARSの死亡率が2桁だったことを考えると、SARSよりはだいぶ弱いのではないかと推測できる。

これで中国からの入国者全部はもちろん、武漢や湖北省、その周辺地域からの入国者を制限するのはかなり厳しいのではないかと思う。

ちなみに2019年の訪日外国人数は31,882,100人で、うち中国人が9,594,300人。約30%を占める。

訪日外客数(年表)国籍/月別 訪日外客数(2003年~2019年) (日本政府観光局)

この資料によれば、昨年1月には約75万人来てる。1日2万人以上だ。

これを入国させないと経済的な打撃が結構あるのと、隔離するにしても隔離する場所がないという問題がある。何しろ1週間で10-20万人以上になるのだ。物理的に無理だ。

また、中国人が日本で新型肺炎であることが確認された場合には、日本で治療しなければならないと思われる。

日本のパスポートには「日本国民である本パスポートの所持人を通路故障なく旅行させ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する」との記載があり、これは相互主義で他国のパスポートにも似たようなことが書いてあると思う。

パスポートは世界で通用する“身分証明書”です (外務省)

そして新型肺炎は「指定感染症」になった。

新型肺炎を「指定感染症」に 閣議決定 (NHK NEWS WEB)

指定感染症の治療費用は公費で出すことになっている。

これも法律がそうなんだからしょうがない。

「必要な保護扶助を与え」とは病院での入院と治療で、該当する病気の治療にかかる費用は国内法で公費で出すことになっている。

これについて「なんで中国人の治療に日本の税金が!」と思う人は、政治家に「ただし対象は日本国民に限る」との一文を追加するように働きかけないといけない。

今は病院は来院者を拒めないし、現時点ではどっちにしろ無理な話だ。

というわけで、色々考えた結果、現時点ではインフルエンザと同程度の警戒をする、ということくらいしか法律的にも実際上もできないんじゃないかと思う。

まあ、中国政府の発表が大嘘で感染者数も死者数も大幅に増えるなんてことがあれば別だけど。

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